本研究は、信然斜面よりなる小流域(0.3ha)の流出量観測および水質分析に加えて、当該斜勤の地中炭酸ガスの分圧を測定して、溶存炭酸ガス分圧による小流域の流出成分の分離を試みる手法を考慮しようとするものである。 試験地は、1979年より流出量観測および水質分析を継続している六甲山系横尾地区とした。この試験地内には0.5〜1.0mの深さのオ-ガ-孔が5ヶ所設置されており、かつて孔内水位を測定していたが、今回はこのオ-ガ-孔に隣接して、ち中炭酸ガス分圧測定用に新たにオ-ガ-孔を設置し、孔底から10cmだけストレ-ナ-を切った塩ビ管を設置した。これらの深さは0.45〜0.85mである。さらに1ヶ所だけ浅い孔(0.3m)も追加した。これらの孔はガラスコック付のシリコンキャップで栓をした。地中炭酸ガスの測定は、毎週1回ガステックGを用いて行っている。測定は1991年10月より開始し、現在まで19回実施した。地中炭酸ガス分圧は大気炭酸ガス濃度より大きな値(2〜20倍)を示すことが判明し、地中から炭酸ガスが供給されていることが明らかになった。経時変化は秋から冬期にかけては減少傾向にあること、降雨の後は地中炭酸ガス濃度が増加する傾向にあることなどが、今までの測定結果より明らかになった。これらより、流出水の溶存炭酸がス分圧をパラメ-タとして流出成分分離が行える可能性のあることが判明した。今後、測定を継続するとともに、水質分析を行い流出成分分離の方法を考察する予定である。 なお、この試験地では地下水が斜面の途中から流出していることが明らかになったため、この地下水および孔内水位測定孔から地下水を採水して、より詳しい流出解析をも行う予定である。
|