研究概要 |
研究分担者である吉岡は、ある炭酸ガス分圧を有する水が岩石・土壌中を通過する段階で、新たに炭酸ガスが供給されないとするならば、その水中の炭酸ガスは岩石・土壌と反応しながらHCO_3^-濃度とpHを高めることを利用して、pHとHCO_3^-濃度と炭酸ガス分圧を利用した地表水と地中水の分類方法を提案した。本研究はこの考え方の妥当性を検討するものである。調査対象地とした流域はかつて研究代表者らが豪雨時の水質の変化より流出の初期には古い雨水の押し出し流が認められると報告した場所である。観測は1991年10月より開始し約1年間、原則として毎週1回実施した。採水した試料の分析は吉岡が実施した。 今回の観測では採水時の形態で分類すれば、水平ボーリング孔(1,2,4)、孔内水(A〜E)、湧水(10G)はいずれも地下水型、流出水(10)は表流水型である。しかし分類の結果、湧水(10G)は表流水型、表流水(10)は地下水型となることが判明した。湧水(10G)は不透水層である基岩が存在しているため表土層内の水が水滴状に落下しているものを1週間かけて採水した。このため形態的には地下水と判断していたが、HCO_3^-とpHのバラツキは採水前1週間の総降雨量とよく対応しバラツキの原因が雨水であることが明らかになった。またバラツキ時にはHCO_3^-濃度の増加も見られ、かつての押し出し流の傾向も示した。一方、表流水(10)が地下水型となったのは、この地点は水系の源流部に相当するため地下水の浸出水をそのまま採水していたものと思われる。このように形態的な地下水・地中水の分類は信頼度が劣り、そのためには本研究のような手法が必要と思われる。また表流水(10)での豪雨直後の測定結果は、測点が表流水型へ移動していることが確認でき、豪雨時に詳細な採水を行うことにより地表水・地下水の流出成分分離も可能となることが明らかになった。
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