火害コンクリートの特徴は、劣化程度の著しい部分がコンクリートの表面から数ミリないし2〜3cm程度と浅い層をなし、深部の健全なコンクリート部分との境界が比較的はっきりしているところにある。 このような火害コンクリートの劣化診断を非破壊試験法によって行う場合は、コンクリートの全断面にわたる平均値として劣化診断をするのではなく、コンクリートのごく浅い表層部分の劣化程度を診断することが肝要である。マイクロ波は波長が短いためコンクリート中の透過率が悪い反面、コンクリート中の異質境界で内部反射する傾向があり、火害コンクリートの表層劣化部分の品質判定には適しているものと思われる。筆者はマイクロ波のこの性質を利用して、マイクロ波による火害コンクリートの劣化診断をするために、マイクロ波透過法について一連の研究を行ってきた。その結果、火害コンクリート表面の熱拡散係数を実測して、コンクリート内部の温度分布曲線を推定し、次に、マイクロ波を透過させてコンクリート全断面の平均的な位相定数を求め、両者の値から火害コンクリートの劣化深さを推定する方法を提案した。しかし、この方法もかなり測定が複雑であるなどの難点がある。 このため、本研究では、より実用的な手法として、従来の透過方法の考え方とは全く異なるマイクロ波反射法に基づいた火害コンクリートの劣化深さと残存圧縮強度を推定する方法について検討した。その結果、マイクロ波が鏡面反射則に従うことを利用して、火害コンクリートの表面劣化層の厚さを±0.5mm程度の精度で測定できること、ならびに残存圧縮強度も±20%以内の精度で測定できることなどを明らかにした。
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