明治以降の近代について、住宅平面の変遷とその住生活上の要因を歴史的に分析し、その結果を延長したところに今日を位置付け、今後の方向性を考察することが目的である。建築家の住宅計画に関する検討は既応のものがあるため、居住者による計画を主な対象とし、本年度は主婦層の計画を収録している婦人雑誌から資料を収集し、集計・分析を行いつつある。 対象とする雑誌として、明治以降から継続して刊行している『婦人之友』と『主婦の友』を選定して、国・公立の図書館や大学の図書館より複写によって該当する資料を、昭和末までについて収集した。 分析は、以下の2点を中心に行っている。 (1)各記事に含まれている居住者と住宅の基本属性を検討し、中流層の社会的位置付けを行う。居住者に関しては、収入・家族構成などを検討し、中流層が戦後に大きく変化し、大衆化した状況を把握した。住宅属については、住宅形式・規模の変化を検討し、中流層の社会的地位の低下とともに住宅規模も縮小することを明らかにした。 (2)計画主体による住宅平面の計画内容の変遷の検討。掲載している住宅平面を対象に、計画者が建築家である場合と居住者である場合とで、どのような差異がみられるのか明らかにしつつある。その結果、相互に比較してみると、住戸内での重点の置き方や改善していく時の視点が異っており、生活に根ざした改善では、居住者の提案の方が建築家の考え方より先行している点も多かったことを指摘した。特に、生活や居室の洋風化に対する姿勢や計画事例について、重点を置いた分析を行っている。さらに、建築家の計画理論が居住者に与えた影響、逆に、居住者の工夫が建築家に与えた影響など、相互に与え合った影響の内容と、その結果による発展についても深めていく必要がある。
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