1.近世の伝統的木造建築大工の研究を進めるに当たって、一級資料である社寺所蔵の棟札の収集に努めた。その範囲は福岡・佐賀・大分県の北部九州を中心としている。 2.特に、地元福岡では宗像市・太宰府市などほぼ悉皆調査を行った。前者は宗像大社が近くにあり、後者は太宰府天満宮があって、どちらも本殿が類似した形式なので、その関係などを建築大工の点から解新できるのか否かという問題をかかえていたからである。 3.この問題の結論を出すのは時期尚早であるが、福岡市在住(福岡城下町)の大工が近世時に宗像大社と太宰府天満宮本殿の造営に関わったことが判明し、成果を得た。 4.収集した資料のうち、建築大工のみを整理して、「福岡県の建築工匠(その1)」として平成3年度に発表した。また、具体的な建築大工の考察を「佐賀県の大工について」と題し、さらに、棟札そのものの成果として「佐賀県の棟札を読む(その1)」として公表した。 5.その他、大分県や熊本県の大工は近世時県外に出て活躍している様子が伺える。しかし、福岡県の大工の場合は県外に出ていないにうである。逆に大分県から福岡県に来て仕事をしている実例を発見した。 6.今後、棟札を用いて、建築大工と作風との関係などを詳細に追求しながら、研究課題を遂行していく。
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