研究概要 |
鉱山排水起源の硫黄集積培養槽中に、菌類以外に原生動物(Bodo edax)の生息が認められた。本研究では、この原生動物と硫黄酸化細菌との集積培養槽中における相互関係を検討するために、いくつかの酸化条件について実験を行った。本年度は主にCu^<2+>を添加した集積培養微生物による硫黄の酸化についての実験を行ったので以下に得られた知見を要約する。 一般に、生物にとって必要となる金属類であっても、特定の濃度以上になると生物に対して阻害作用を示すことが知られている。しかし、チオバチラス属細菌は強酸性でかつ高濃度の金属イオンを含む鉱山排水中に生息しているため、Cu^<2+>をはじめ、多種類の金属イオンに対して高濃度においても耐性をもつ。したがって、集積培養槽に銅を添加すれば、チオバチラス属細菌と原生動物との相互関係に何らかの影響を及ぼすものと考えた。以下に実験結果をまとめる。 (1)Cu^<2+>を含む培地で継代培養を行った場合、硫黄酸化細菌はCu^<2+>に対するより大きな耐性をもったが、原生動物はもたなかった。 (2)Cu^<2+>を添加することにより、集積培養槽中における硫黄酸化細菌と原生動物との相互関係はくずれ、双方の数の比が10^<-4>以下になった。 (3)富栄養における硫黄酸化細菌の対数増殖曲線から増殖収率を求めた。原生動物が存在しないときの増殖収率は存在する場合の約7倍であった。 (4)培地にCu^<2+>を加え、その濃度を1,10,100および1000mgdm^<-3>とした場合の比較実験では、硫黄酸化細菌は1000mgdm^<-3>の場合を除いて、Cu^<2+>による多少の阻害作用はあるものの増殖することが可能であった。それに対して原生動物は1,10mgdm^<-3>の場合は増殖したが、その増殖量は無添加の場合よりも低く抑えられており、また、100mgdm^<-3>の場合は増殖せず、1000mgdm^<-3>の場合は増殖せず、1000mgdm^<-3>の場合は約200時間後には観察されなくなった。
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