研究概要 |
ある特殊な組合せの電解質水溶液/有機液体を選んで,その界面に微動装置を用いて電極を固定してカソ-ド還元させると,金属薄膜が界面に沿って成長することがある。これは新しい金属薄膜製造法と考えうる。 したがって,本研究ではさまざまの金属について金属薄膜製造の実験条件を詳しく調べ,金属薄膜の形態と成長機構,薄膜の物理的・化学的諸性質を総合的に調べ,他の方法で得られた薄膜と比較検討する。 (1)電解質水溶液/有機液体界面における電析金属薄膜の製造 Zu,Co,Ag,Cuについて生成する金属薄膜の形態におよぼす実験条件(有機溶媒の種類,電解質の種類と濃度,温度,電流・電圧の印加法)の影響について調べた。その結果,界面張力が大きくなる電解質水溶液/有機液体ほど膜成長しやすかった。温度により成長の形態が著るしく変化するため,電解槽は温度制御するのが望ましく,室温より10℃程度高くすると膜成長しやすかった。印加電圧が低いと膜成長しにくく,高いと針状成長しやすくなるため,良好な薄膜を得るためには電圧を制御する必要があった。 (2)金属薄膜の成長過程の形態観察と結晶解析 金属薄膜の成長過程を写真機を取付けた顕徴鏡下で直接連続観察した。取り出した金属薄膜を走査電顕観察,透過電顕観察し,X線回析結果とあわせて結晶学的考察をした。 得られた亜鉛薄膜は有機液体側は金属光沢があるが,水溶液側は亜鉛の泥状析出物が付着し黒灰色であった。薄膜を断面観察すると金属光沢のある有機液体側は約1μmの薄膜で,水溶液側に30μm程度の針状成長物が付着していた。亜鉛薄膜は(0001)面に沿って成長していた。針状成長物は六角板結晶の積重ねであった。膜成長物には年輪模様の成長縞があるが,これは水溶液中のマランゴニ-効果と関係づけられた。
|