研究概要 |
ある特殊な組合せの電解質水溶液/有機液体を選んで,その界面に電極を浮かせてカソード還元させると,金属薄膜が界面に沿って成長することがある。この現象を応用すれば,新しい金属薄膜製造法とすることができるものと考えられる。したがって,本研究ではこの方法による金属薄膜製造の実験条件を詳しく調べ金属薄膜の形態と成長機構,薄膜の物理的,化学的諸性質を総合的に調べ,他の方法で得られた薄膜と比較検討する。 本年度はこれまでに得られた結果をふまえ,2液相界面において亜鉛薄膜とコバルト薄膜を連続的に製造する方法について検討した。カソードとしてアルミニウム箔を2液相界面に浮かし,それと垂直に所定距離を離してアノードを配置し,生成する膜をモーターで巻き取っていく方法で金属薄膜の連続的製造を試みた。実験条件を選んで電析を行うと,アルミニウム薄膜の先端から金属薄膜が成長し,アノードとカソードの距離が一定になるように巻き上げれば数mm/minで連続的に成長させることができた。一般に亜鉛薄膜の方がコバルト薄膜よりも生成しやすかった。いずれの膜も,X線回折法で調べると,一定の方位に結晶配向していた。 これらのことから,この方法を用いれば固体基板を用いずに薄膜を製造でき,しかも薄膜の成長方向を制御できる利点があり,新しい薄膜製造法であることが明らかとなった。
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