本年度では、疲労特性の評価、適用部品の選定、および本研究課題のまとめを行った。 (1)低サイクルおよび高サイクル疲労特性の評価 TRIP型複合組織鋼(TDP鋼)の低サイクル疲労は、残留オーステナイト(γ)のひずみ誘起変態と母相/第2相の強度差によって発生する内部応力に支配され、これに起因して、極めて大きな疲労硬化が現れた。試験温度が高くなると、ひずみ誘起変態が抑制され、疲労硬化は小さくなった。 高サイクル疲労強度は、同等の引張強さを有する従来の複合組織鋼(DP鋼)より低いが、試験温度が高くなるにつれてDP鋼よりはるかに高くなった。この原因については、現在検討中である。 (2)適用部品の選定 プレス成形性の改善に関する前年度の研究成果に基づき、低炭素TDP鋼を試作し、乗用車のクロスメンバーおよびロアアームのプレス試作を行った。また、疲労特性の評価をした(自動車メーカーにて実施)。成形は可能であるが、溶接部の疲労強度が不足であるという結果を得た。今後、成形品および溶接後の疲労特性を詳細に検討する必要性を感じた。 (3)まとめ 前年度および今年度の成果をまとめるとともに、今後の課題を整理した。
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