コンクリートやモルタルは圧縮力には強いが、引張力には弱い。このために繊維強化コンクリート(FRC)は引張り、曲げ、捩りのかかる部材に用いられる。このため、本研究では曲げ試験を中心に鋼繊維強化モルタルの研究を行った。 試験片製作のための素材は次のとおりである。普通ポルトランドセメント、珪砂、減水剤(ダーレックス)、神戸製鋼所製鋼繊維(シンコーファイバー)、日本板ガラス製耐アルカリガラス繊維(セムフィル)ローピング。水/セメント比は0.35とし、全重量に対する鋼繊維配合率は9%とした。ガラス繊維を1%、および0.5%添加したときは、鋼繊添加量を6%および7.5%とした。鋼繊維は強く冷間加工されたままのもの、これを700℃で1hr真空焼鈍したもの、およびこれら2種の鋼繊維の表面にグリスを塗付したものの4種を用意した。型枠は40×40×160mm^3であり、鋼繊維をランダムに混入したものと長手方向に配向させたものの2種を用意した。これらとは別にガラス繊維のみを配合したGFRCも参考のために作製した。 結果の主なものは次のとおりである。 (1)曲げ弾性率は鋼繊維を添加する程低くなり、同時に弾性限界も低下する。鋼繊維の弾性率はモルタルの約7倍である。従って、所謂複合則によれば鋼繊維配合率とともに増加するはずであるが、上述の結果が得られたのは鋼繊維とモルタルの界面の応力集中部でモルタルの微小割れが発生するためと思われる。フレキシブルなガラス繊維強化モルタルの弾性率は向上した。グリスを塗布することによって弾性率は一層低下したが、真空焼鈍鋼繊を用いたときは弾性率がグリス塗布によって向上した。 (2)曲げ強度及び靭性は鋼繊維添加によって向上し、グリス塗付によって低下した。鋼繊維の硬さの影響は殆んどなかった。
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