研究概要 |
1.炭素源として、高弾性型カ-ボンファイバ^*を用いて反応を行なった試料の方が、オキシパン(ポリアクリルニトリルを空気酸化して架橋構進化したもの)を用いたものよりも、生成SiC量が多く試料繊維内の亀裂の発生が少なかった。(*PAN系) 2.けい素源としてけい素を用いたものは、繊維がストランドの形態を維持したままで、繊維表面の組織が覆われていたのに対し、一酸化けい素を用いたものは、繊維が一本一本のフィラメントにほぐれてなめらかであり、表面は平滑であった。またポリシラザンも用いたが、外観のよいものが得られず実験プロセスの改善が必要と考えられた。 3.上記1,2項で最適な原料と結論された高弾性型PAN系カ-ボンファイバと一酸化けい素との反応により、炭化けい素多結晶長繊維を12通りの反応条件下に反応させた。1700℃で反応させた場合は、かなり高い炭化けい素の生成量が示された。また、減圧度を0,-20,-50,及び-76CmHgとかえて、1500,1600℃の反応温度をも加えて反応させた結果、-76CmHg減圧下の生成物のみは、炭化けい素と炭素との間の界面が明確な二重構造(刀とさやのような)をもつ組織ではなく、所謂組成傾斜した組織となっている可能性をもつことが、走査型電子顕微鏡像から推測された。またこの生成物だけが外観がソフトでほぐれ易い繊維集合体であることも明らかになった。 以上の結果にもとづいて、得られた繊維の強度や、耐酸化性など基本的な特性を測定すべく、種々準備を行なった。また、このような組成傾斜構造や、繊維のソフトさがみられる機構について検討を行なうべく、次段の実験方法を考察した。
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