〔1〕従来のSiC長繊維は、無定形で耐熱性が不十分であることから、その製法を基本的に変更して、既存のカーボンファイバをSiOでけい化(β-SiC化)させることによって、無定形でなく多結晶型に改良すべく、3種の原料ファイバを用いて試作した。この結果、高弾性率型(東レ・M40)を前駆体とし、-76cmHg(ゲージ)の減圧下、1500〜1700℃でけい化反応を行わせた生成物は、見かけ上柔軟で強度を保持しているように思われ、繊維の断面はSiCの繊維表面からの「傾斜型構造」をもつようなSEM像が得られた。 〔2〕しかしながら、このようなソフトでフレキシブルな繊維の強度測定を種々試みたが、柔軟な外観に反して脆く測定困難であり、複合材料化に必要とされるフィラメント・ワインディング形成ができないことが分かった。従って、本研究の当初の目的を変更し、カーボンファイバの表面だけをSiC化することによって、従来SiC長繊維ではなくカーボンファイバの耐熱性を改良すべく、種々な反応条件下に実験を繰り返した。その結果、-76cmHg(ゲージ)の減圧下であれば、1400℃という低温下、数分程度の時間で、比較的平滑な表面をもち、かつ、単繊維の強度測定に耐える機械的特性を有する「β-SiC被覆カーボンファイバ」を得ることができた。次いでその耐空気酸化性について検討し、酸化で2%重量が減少する温度が、被覆しないファイバに比べて100℃以上も高くなることが分かった。これは、表面温度として耐熱400℃を要求される超々音速航空機の機体材料としての一つの可能性を示すものと考えられる。強度の改良は、今後、超高強度型カーボンファイバを原料とする実験で実現の可能性が大きいと思惟される。
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