本研究では、フェノ-ル誘導体のルイス酸存在下における新しい光化学反応を見いだし、容易に得られる芳香族分子からの移環状脂肪簇への斬新な炭素骨格変換法を開発した。 1.3ーメトキシフェノ-ルの光異性化 これまでメチル置換フェノ-ル類のハロゲン化アルミニウムやプロトン酸存在化でのルミケトン型光異性化は知られていたが、メチル置換体以外の誘導体については同様の変換は報告されていなかった。本研究では3ーメトキシフェノ-ル(1)が臭化アルミニウム存在下で4ーメトキシビシクロ[3.1.0]ヘキセノン(2)に良好な収率で変換できることを見いだした。またそのメチル置換体についても検討したところ、2ーメチル体において同様の変換が起こることを見いだした。得られた(2)はベ-タメトキシエノン部という合成化学的に有用な官能基を有しているので、種々の含5員環化合物に変換が可能である。 2.1ーナフト-ルの光環縮小反応 1ーナフト-ル(3)においても上記と同様のルミケトン型異性化が期待できる。しかし、(3)の光反応をハロゲン化アルミニウム存在下で行なうと、形式的にはルミケトン型生成物(4)にハロゲン化水素が付加した形の環縮小体であるハロメチルインダノン(5)が良好な収率で得られた。また、同様の環縮小反応は2ーアルキル及び6ーメトキシ置換体でも起こることを見いだした。おそらくルミケトン型生成物に至る中間体にハロゲン化水素が付加したものと思われるが、反応機構の詳細については明らかではない。(5)は塩基と処理することによりほぼ定量的に(4)に変換できたので、形式上二段階でルミケトン型の異性化を達成したことになる。
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