研究概要 |
本研究では光四員環化反応を多種解析してその選択性の因子を明らかにすると共に、その選択的光付加反応を利用して、必要な立体配置に置換基をもつシクロブタン部を調製しまたこれを誘導し、次いでアデニンやチミン等の核酸塩基(Base)とN-C結合する。これによりAIDS等の抗ウィルス活性や抗腫瘍活性が期待される新規炭素四員環ヌクレオシドを開発する。本研究により次のことを明らかにした。 1.ヘテロシクロヘキサジエノンの1つ、2-ピロン体とアクリル酸エステル等のエチレン置換体との間の、光増感反応による付加位置、配向および立体選択的炭素四員環形成反応等を解析した。2-ピロン体の3,4位は電子供与性基をもつエチレン置換体と,またその5,6位は電子求引性基をもつエチレン置換体と各々配向特異的にシクロブタン生成反応を起こし、これらは励起三重項ピロンからのフロンティア相互作用効果によると推定された。2.2-ピリドンの選択的光シクロブタン形成反応についても解析したが、その生成は異なる励起種および相互作用効果による。3.2-ピロンおよび2-ピリドンに各々側鎖に不飽和結合を導入し、光化学反応を行って三環性シクロブタン体多種類を得ると共に、その反応の選択性の因子を明らかにした。4.三置換シクロブタン体の合成について種々検討し、酢酸ビニルと無水マレイン酸との光付加体を誘導して、アデニンとのN-C結合を行った結果、望ましい立体配置と推定されるall-trans三置換シクロブタニルプリンを合成できた。さらにこれを還元して、目的とする炭素環オキセタノシンに誘導できた。本合成法の特徴は、選択的光付加反応を利用してall-cisの立体構造をもつシクロブタン体から核酸塩基との反応でall-trans構造のkey中間体に変換し、わずか4ステップで炭素環オキセタノシンを合成したことにある。今後、光学分割を行い最終目的物を得、薬効試験に供する。
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