本年度の研究では.昨年度の研究を進める中で明らかとなった試料加熱法の問題を解決し.実際の試料について測定を行なうことを目的とした。以下に本年度に得られた成果の概要を報告する。1.加熱法をステッピングモーターによって偏光板を回転させる方式に改めたことは昨年度の報告で述べたが.ステッピングモーターの駆動電流によるノイズが未解決の問題であった。本年度はまずこの問題にとりくみ.モーターの駆動電流と回転トルクの関係を詳細に検討し.駆動電流を通常よりも小さくおさえることで解決した。2.測定システム全体を制御しているパーソナルコンピューターのプログラムを.昨年度の補助金で購入したFFTアナライザーとステッピングモーターの回転数をコントロールするよう改造した。これによって加熱周波数を順次切り換えながら測定を行えるようになった。3.試験的に低分子量ポリスチレン(MW=2000)のガラス転移点近傍で測定を行なったところ.ロックインアンプを用いる従来の方法に比較して.測定時間を1/10程度に短縮できることが明らかとなった。これにより本研究の第一の目的であった.測定時間の大幅な短縮が達成できたことになる。短時間に多くの周波数について測定が可能になったことにより.高分子物質の物性に大きな影響をおよぼす熱履歴の研究が大きく進展するものと期待される。4.測定周波数は.試料と試料容器の間の熱抵抗と試料内の熱拡散の速さで制限されており.現在のところ0.5Hz〜30Hz程度である。この周波数域を拡大することが今後の課題として残されている。
|