本研究は、高分子ゲル構造の新しい研究手段として電気複屈折緩和の方法を試みたものである。測定装置の作成、及びその適用例として電解質多糖ゲルであるカラギーナンゲルの橋かけ領域構造解明を行なった。 実施結果と実績は以下の通である。 1.電気複屈折緩和応答の測定装置については、今年度の本研究補助金により、購入したパルス発生器・高圧電源を組み込んだパルス発生器系、及び高精度アナライザー・信号増幅オペアンプを組み込んだ複屈折検知用光学システムを自作により作成した。これによりゲルの橋かけ間距離に対応すると思われる微弱な電気複屈折信号の検知が可能となった。 2.ゲル状態解明の予備実験としてまずゾル状態での基礎性状を明らかにするため光散乱法により分子量決定したカラギーナン試料を用いて電気複屈折緩和測定を行った。その結果、イオン分極によるカラギーナンの電場配向機構の存在が明らかになった(論文発表済)。また、カラギーナンのゲル化はコイル-ヘリックス転移を基本としていると考えられているが、この点について対イオン活量の面からの研究を行ないこのヘリックスは一本鎖ヘリックスをとっていると推定した(投稿中)。 ゲル構造について行なった予備実験の結果電場パルスの出力が低い場合は橋かけ領域に対応すると思われる複屈折緩和応答を示すが、出力を上げると上記の応答と共にゲルの変形と思われる二段階の応答を示すことがわかった(論文発表済)。また、これらの応答はゲルを調整する濃度にも依存することが明らかとなってきた。さらに緩和時間の解析より、ゲルの橋かけ領域の大きさを推定した。以上の結果より、電気複屈折緩和法はこれまであまり情報のないゲルの構造解析の手段として有力な手段となり得ることが明らかになった。
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