研究概要 |
本研究では,海用生物における炭酸塩の生成に関与すると見られるタンパク質に着目し,液相中における炭酸塩の晶析をタンパクを構成するアミノ酸の存在下で生起させ,その存在下における核化・成長現象と得られた結晶の晶癖・粘度との関連性を化学工学的手法により解析し,CO_2の高効率的な回収システムを模索することを目的としている。本年度は液相中にアスパラギン,アスパラギン酸,グリシンなどのアミノ酸を存在させ,過飽和溶液中で炭酸カルシウムの晶析現象を顕微鏡下に実験用モニタ-設備に撮映・観察するとともに,試作した回分晶析実験装置を用いて晶析実験を行ない,濃度低下速度より晶析速度を実測した。晶析速度は過飽和度の指数乗で表わされ,アミノ酸を添加した系と無添加系では過飽和度の指数及び速度係数が変化することを見出した。またアミノ酸の添加量を高めると,速度係数及び過飽和度の指数が増加し,表面律速過程への移行が示唆された。このようなアミノ酸の寄与を炭酸カルシウムの胚種生成過程及び成長過程との関連で考察した。以上の回分晶析実験で得られた形状,粒径は不均一なものとなり,均一な性状が得られる晶析条件下でアミノ酸の作用を把握する必要性を生じた。そこで,炭酸塩とカルシウム塩溶液を攪拌部で高速に均一混合する半回分式ダブルジェット法による炭酸塩の生成を試み,操作過飽和度及び流動条件と得られた結晶性状との関連性について検討した。この結果,操作過飽和度条件により,斜方状あるいは球状晶が選択的に得られることを見出し両領域において平均成長速度と過飽和度の相関を得ることができた。粒径分布は,回分晶析法に比べ均一粒径のものが得られ,その粒径分布の時間的推移より,装置内における二次核化現象が関与することを確認した。次年度は,本年度得られた晶析条件に基づいて,アミノ酸存在下における炭酸カルシウムの晶析を核化・成長現象との関連で検討する。
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