研究概要 |
本研究では,炭酸塩とカルシウム塩溶液をダブルジェット反応晶析装置内で反応させ,装置内における成長及び核化現象を追跡することにより所望の炭酸カルシウム球状微粒子を得るための操作条件について検討した。まず反応晶析装置内の溶質の濃度変化を表すモデルを核化,成長からなる領域と,結晶成長からなる領域に分けて示し,これが反応液の濃度0.05〜1.0mol/lの範囲の実験結果と良く一致することを示した。反応液濃度が0.3mol/l以下の条件では,供給された原料はすべて反応初期に生成した結晶核の成長に寄与し,平均粒径20μm以下の均一な球状晶が得られた。しかしながら,晶析時間を長くして,さらに粒径を増加させようとすると,結晶同志の相互作用により生成する徴結晶の生成が認められ,難溶性塩系の晶析においても二次核発生のための最小粒径が存在することが示唆された。一方反応液濃度を0.3mol/lを超える濃度で操作すると,反応初期より攪拌翼近傍で徴結晶の生成が確認され,また微結晶の粗大結晶への付着が観察された。このように微結晶の発生を防止し,均一微粒結晶を高い生産性で得るには,攪拌翼近傍で生成する不安定核を速やかに低過飽和域に供給する操作・装置の開発が必要となることを見出した。さらに反応晶析過程における粒径分布の経時変化より、成長速度を算出したところ,粒径の増加につれて,結晶密度が変化することを明らかにした。ダブルジェット反応晶析装置において生成する粒子の粒径は,反応初期に発生する微小核数に依存し,発生核の制御法の確立が重要となる。ここでは,微小核数が過飽和度及びその生成法に依存することを示し,最適条件を確立する上での重要な因子になることを堤示した。本研究により液中に溶存する炭酸塩を炭酸カルシウムの形で固定する方法として,ダブルジェット反応晶析法を適用し,所望の均一球状微粒子を得るための最適操作範囲を明示した。
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