本年度の研究計画のうち、まず、in vitroでのミトコンドリアの転写・翻訳に対するシアン耐性呼吸阻害剤の影響をカリフラワ-の花序を用いて調べた。本阻害剤の存在下で、蛋白合成への ^<35>Sーメチオニンのとり込み量がかなり増大したが、これは新しい蛋白が合成されたのではなく、既存の蛋白の合成量が増大したものであった。現存するミトコンドリア遺伝子が活性された可能性が考えられる。次に、種子の発芽時に本阻害剤を処理した時、花に雄性不稔性が誘発されるかどうかを種々の植物種で検討した。澱粉貯蔵型種子と脂質貯蔵型種子の区別では、発芽・生育に対する阻害が大きく、効果を検討するには至らなかったが、アブラナ科の大根・菜類では、ブロッコリ-同様不稔性が認められ、興味あることに、その変異は個体により連続的であった。この発芽吸水時の本阻害剤の処理は、呼吸測定の結果、ほぼ完全にシアン耐性呼吸を阻害していたが、その後、水で発芽させていくと、徐々に回復した。葉のシアン耐性呼吸も変異個体葉で低い傾向がみられた。この様に、シアン耐性呼吸は、花の雄性不稔性の発現に関与している可能性が示唆される。 不稔花粉で欠失する物質の同定については、花粉の分画法を開発中であり、特にフラボノイド物質に注目して、物質の同定を急いでいる。 又、本変異の遺伝性解析のたるにF2種子を得て、現在F2植物体を育成している。花の開発を待って、調査する。
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