研究概要 |
本年度は、ブロッコリーの種子発芽時にシアン耐性呼吸経路阻害剤を処理して誘発された雄性不稔個体を用いて、不稔性の生理・生化学的発現機構にアプローチすることを試みた。まず、花粉の発育初期の葯(未熱葯)の呼吸に占めるシアン耐性呼吸の割合を酸素電極を用いて測定したところ、有意な差異は認められなかったものの、変異系統では、正常系統よりシアン耐性呼吸の割合が低い傾向が認められた。次に、この時期の葯を集めて粗ミトコンドリアを分画し、シアン耐性呼吸経路の最終酵素のモノクローナル抗体を用いて、イムノブロット分析を試みた。ブロッコリーの葯には、かなりの量の本酵素が存在することが予測されたが、その程度や不稔性との関係など、詳しい検討は今後に残された。 細胞質雄性不稔性系統のブロッコリーでは、小胞子初期の葯でフェニルアラニンアンモニアリアーゼ活性が正常系統より低く、そのことが不稔花粉の増大と関係している可能性を報告(育種学雑誌41,別1:446-447)したが、当変異系統の葯でも有意に活性が低かった。また、細胞質雄性不稔性系統のブロッコリーの小胞子初期の葯で、エチレンが正常系統より有意に発生している現象を認めたが、当変異系統でも同様にエチレンの多量の発生を認めた。このように、シアン耐性呼吸経路阻害剤で誘発された変異系統は細胞質雄性不稔性と同様の生理的傾向を示し、その発現機構を考える上で興味が持たれる。
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