研究概要 |
低温に強いホウレンソウ葉からPhosphatidyl glycerol(PG)の脂肪酸組成を支配しているStearoyl ACP desaturase(脂肪酸不飽和化酵素)の遺伝子を単離し,低温に極めて弱い高温性ラン(ファレノプシス)に導入することを計画した。 オリゴヌクレオチドプロ-ブを用いて,ホウレンソウ幼葉のcDNAライブラリ-を検索したところ6種類のcDNAクロ-ンを得た。各クロ-ンのインサ-トDNAを調べたところ,SPSADー6クロ-ンのcDNAは全長1,610bpで1,097bpの脂肪酸不飽和化酵素のORFを持つことを見出した。このORFは399個のアミノ酸残基から残るポリペプチドをコ-ドしており,ヒマ・キュウリ・サフフラワ-種子の不飽和化酵素のアミノ酸残基数,396個と近似しており,全体の配列の類似性はそれぞれ84%・81%・82%であった。その配列のうちの最初の35個のアミノ酸は転移ペプチドを形成していることが推定され,成熟酵素は364個のアミノ酸残基からなることを予想した。 現在,この遺伝子を大腸菌発現ベクタ-に組み込んで酵素タンパク質の発現を検討している。また,SPSADー5と1は不飽和化酵素のIsozymeと考えられる配列をインサ-トとして持ち,今後の展開が興味深い。 平行して,BーGlucuronidase(GUS)遺伝子を持つpBI121プラスミド(Ti系プラスミドベクタ-)を用いてペチュニアの形質転換の最適条件を調べた。リ-フディスク法とprotoplast/electroporation法によりpBI121の導入を行ない,カルスの形成を見た。現在,植物の再生途上であるが,今後,植物体抽出物のGUS活性の測定や植物体のDNA中に取り込まれたGUS遺伝子のコピ-数などを調べる予定である。
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