研究課題/領域番号 |
03806007
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大崎 直太 京都大学, 農学部, 講師 (70127059)
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研究分担者 |
佐藤 芳文 京都医療技術短期大学, 診療放射線技術学科, 講師 (80215871)
久野 英二 京都大学, 農学部, 教授 (10026560)
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キーワード | 植物 / 食植性昆虫 / 寄生性天敵 / 防衛法 / 誘引機構 / イヌガラシ / モンシロチョウ属 / アオムシコマユバチ |
研究概要 |
アブラナ科植物のイヌガラシは、周年種子生産と栄養繁殖を繰り返す多年生草で、他のアブラナ科の植物に比べて、食植性昆虫に対して無防備であることが分かった。例えば、京都市北郊に自生する10種のアブラナ科植物は、年平均9.9種の食植性昆虫に利用されていたが、イヌガラシは23種に利用されていた。昆虫の利用頻度の低い植物は、以下の3種のうちのいずれかの防衛法を持っていた。(1)昆虫の発生期前には生長・繁殖期を終える。(2)昆虫の多発期に生長・繁殖期の断点を設ける。(3)昆虫に対する化学性の摂食阻害あるいは発育阻害物質を持つ。 しかし、イヌガラシに具体的なダメ-ジを与える食植性昆虫は少なく唯一、モンシロチョウ属の幼虫アオムシが強力な打撃を与えることが分かった。例えば、モンシロチョウの卵が1個生みつけられ、卵が蛹まで育ったとしたならば、約75%のイヌガラシ個体は地上部を失うことが分かった。 モンシロチョウ属にとり最大の天敵は、寄生性のアオムシコマユバチである。アオムシコマユバチの寄主探索過程を観察すると、アオムシに食害されたイヌガラシの食痕に誘引された。食痕の何に誘引されるかを調べるために、食痕(a)「機械的な葉の切傷」(b)「アオムシの唾液」に分け、以下の組み合わせでアオムシコマユバチの誘引実験を行なった。(1)食痕そのもの、(2)機械的な葉の切傷、(3)アオムシの唾液、(4)機械的な葉の切傷+アオムシの唾液、(5)他の昆虫の食痕。アオムシコマユバチは(1)と(3)に誘引された。 実験の結果より、アオムシコマユバチは、葉に含まれる化学性物質とアオムシの唾液中の物質が作り出す何かに誘引されることが分かった。この物質を単にアオムシがかぎつけているのか、逆に、植物が誘引しているのかは未解決である。
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