研究概要 |
家蚕の還元型単為発生の誘発処理として、遠心処理、浸酸処理、冷蔵処理、過冷却処理、温湯処理および超音波処理によって還元型単為発生の誘発を試み、処理条件、発生割合、孵化歩合および胚子の倍数性名度について比較検討を行った。また、自然単為発生についても人為単為発生と比較した。実験にはCTK×Cambodge(+/re,+/ch)の卵巣卵を用いた。還元型の単為発生は赤卵(re)の出現を指標にした。 その結果、自然単為発生およびいずれの処理によっても赤卵と正常着色卵ほぼ1:1の割合で出現した。過冷却処理(-11℃,30分)、浸酸処理(S.G.1.050,40℃,20分)、温湯処理(46℃,2分)によって、正常着色卵歩合および赤卵歩合がそれぞれ10%以上得ることができた。また、着色が薄く卵色の判定のできない卵、部分的に着色した卵やモザイク卵なども出現し、特に過冷却処理と浸酸処理において多くみられた。孵化歩合はいずれもの誘発処理によって極めて低く1%以下であった。処理法が簡単であり、46℃で18分温湯処理することによって不還元型の単為発生も得られることから、温湯処理法についてさらに詳細に検討した。処理条件に改良を加えたが、1%以上の孵化歩合を得ることはできなかった。得られた10個体の孵化蚕の蟻色は黒蟻7個体、赤蟻3個体であった。卵色だけでなく、蟻色についても還元型の形質が出現し、還元型単為発生が起こっていることが確認された。しかし、孵化蚕は稚蚕期の内にすべて致死した。このような胚致死及び稚蚕の致死の原因を明らかにするために、胚子細胞のフローサイトメトリーにより、倍数性を調査した結果、胚子は混数体(n+2n+3n)であることが分かった。
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