Pseudomonas属細菌から精製した1ーアミノシクロプロパンー1ーカルボン酸(ACC)デアミナ-ゼの一次構造解析から、そのピリドキサルリン酸結合部位がトリプトファン合成酵素βサブユニットのそれに高い相同性を示すことが判明した。またトリプシン感受性部位も相対する位置にあり、両タンパク質を24%の相同性で重ね合わせることができた。βサブユニットのX線結晶解析結果をデアミナ-ゼの構造モデルとして用いうると考えられた。 ACCデアミナ-ゼの解媒定数及び289.8nmの吸光度変化の温度依存性をプロットした図から20℃付近に屈折点が認められ酵素の配座の変化が予想された。また、酵素は阻害剤Dーアラニンの添加によって赤色に変化し510nmに吸収帯を示すが、510nmにおける吸光度も温度に依存し20℃付近に屈折点が認められた。Dーアラニンの添加はヨ-ド酢酸アミドによる酵素の失活速度を高くした。この失活速度の温度依存性も20℃付近に屈折点を示した。これらの結果は20℃を境とする配座の変化があり、それが酵素の解媒活性やヨ-ド酢酸アミドによる失活速度に変化を与えていると考えられる。 Dーアラニン存在下にヨ-ド酢酸アミドによる失活はNーヨ-ドアセトアミドエチルー1ーアミノナフタレンー5ースルホン酸によっても示され、得られた失活酵素のプロテア-ゼ分解物を分析して、失活剤で修飾されたシステイン残基を同定した。この残基はトリプトファン合成酵素βサブユニットをモデルとするNドメインとCドメインとの接触部に存在することが示され、酵素活性発現のために重要な基であるかどうかをさらに検討している。 ACCデアミナ-ゼは多くの微生物に存在する事が示されているが、Hansenula saturnusから精製された酵素のアミノ酸配列を80%以上解析し、現在、米国の研究者との共同研究でDNAのクロ-ニングが進められている。
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