| 研究概要 |
Candida tropicalis Pk233ではエタノ-ル(EtOH)添加培養初期にイノシト-ル1,4,5三リン酸(IP_3)の蓄積とCa^<2+>取り込み能の上昇が順次一過性に起こり,仮性菌系(PM)形成の引き金となる。イノシト-ル(In)はIP_3蓄積を抑えて形態変化を防ぐ。EtOHでPMとならない変異株ではIP_3ーCa^<2+>系は亢進しない。親株ではadenylate cyclaseーcAMP系も促進され、Inが抑制する。OH〓スカベンジャ-でもあるEtOHによるPM形成はFe^<2+>やアスコルビン酸によっても抑えられる。形態形成における情報伝達・活性酸素の役割の解明を目的として次の結果を得た。1.EtOHとInの作用:リノ-ル酸とリノレン酸が単独でPM形成をもたらし、さらにEtOHの効果を促進した。In添加でホスファチジルInの増加と、同エタノ-ルアミン、同コリンの減少が起こり、それに伴いパルミチン酸が増加し、リノ-ル酸とリノレン酸が減少した。従ってEtOHは膜の流動性の上昇を介して情報伝達を促進し、Inの効果は流動性の抑制によることが示された。示差熱計による膜流動性の測定を準備中である。2.Ca^<2+>動員:電気穿孔によるフラ2の導入、Ca^<2+>ーフラ2複合体の蛍光強度測定により、IP_3ーCa^<2+>系亢進と同じ対数初期と、PM形成開始の対数中期に細胞質Ca^<2+>濃度の一過性の増大を認め、形態形成におけるCa^<2+>の関与を確認した。3.cAMPの役割:実験準備中である。4.タンパク質リン酸化:EtOH培養菌に特異的にタンパク質phosphatase活性が高かった。その抑止によるリン酸化タンパク質の検出と、pposphataseの役割を検討中である。5.変異株:アデニン要求株を取得し、細胞融合による解析への利用を検討中である。上記のEtOH不感受性株はCa^<2+>イオノフォアではPMとなり、IP_3生成又はCa^<2+>動員に欠陥があると推定された。6.活性酸素の関与:Fe^<2+>等の効果をH_2O_2が促進し、EtOH以外のOH〓スカベンジャ-もPMを与えたのでOH〓の関与が支持された。OH〓の膜流動性や情報伝達への効果を検討中である。
|
