研究概要 |
ニンニクやタマネギなどのネギ属(Allium属)植物中の硫化アリル化合物には強い抗血小板作用を示すものがある。私どもは,すでにそれらの中から強い活性を示すmethyl allyl trisulfide(MATS)を分離固定し,MATSは血小板内遊離アラキドン酸の代謝を阻害する作用を示す成分であることを明らかにした。しかしながら,アラキドン酸代謝系の阻害部位は特定されておらず,本年度はこの点を明らかにするための研究を行った。即ち,ニンニク精油,ニンニク絞り汁および新規合成法によって合成したMATSなどが,アラキドン酸代謝系の主要酵素に及ぼす影響をin vitroの酵素反応系を用いて検討した。Phospholipase C(PL‐C)は細菌(B.thuningiensis)のphosphatidyl inositol特異PL-Cを^<14>C‐Inostol含有phosphatidylinositolに作用させ,遊離放射活性を測定した。Phospholipase A_2(PL-A_2)活性は,ブタ膵PL-A_2を^<14>C-アラキドン酸含有phosphatidylcholineに作用させ,遊離放射活性を測定して求めた。その結果,MATSおよびニンニク精油・絞り汁ともに,これらの酵素活性に顕著な影響を及ぼさないことが知られた。このことはニンニクによる抗血小板作用は,アラキドン酸代謝系を阻害するとはいうものの,少なくとも血小板膜中の酵素活性を阻害するものではないことが明らかとなった。 上記の実験とは別に,数種の無臭ニンニクについて,揮発成分,アリイナーゼ活性とその性質,構成タンパク質などを分析した。その結果,天然で無臭の二種は,一方はタマネギに近似し,他方はニンニクに近似していたため,これらを一概にニンニクと呼ぶことは困難であることが示唆された。人為的に無臭化したもの五種については,アリイン含有量揮発性成分量に大きな差異が認められたので,これらについても一様に無臭と呼称してよいものか否か疑問視された。
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