硫黄酸化細胞であるThiobacillus thioparusはチオシアンを唯一のエネルギ-源として独立栄養的な生育を行う。本細菌から初めて単離・精製されたチオシアン加水分解酵素の生化学的性質を中心に本年度は研究を行った。 1.チオシアン加水分解酵素の精製 本研究において申請した-80℃超低温冷凍庫は計画通り購入され、これによって本酵素が大量に精製でき、しかも安定に保存できる事が可能となった。精製した酵素を用い2の研究を行った。 2.チオシアン加水分解酵素の生化学的性質 本酵素によりチオシアンは硫化カルボニルとアンモニアになることが明らかとなり加水分解酵素である事が示された。本酵素は金属に対する要求性は無く、チオシアン以外の基質特異性は示さなかった。本酵素はシアンによって強い阻害を受け、8μMのKCNの存在下では酵素活性は50%に低下した。また本酵素は生育基質をチオ硫酸とした時には全く合成されずチオシアンの時にのみ誘導される等の性質が明かとなった。α及びγサブユニットに対する抗体は得られているがβに対する抗体はまだ無い。そこでSDSーポリアクリルアミドゲル電気泳動を行いβサブユニットをゲルから溶出させた後、ウサギを用いてポリクロ-ナル抗体を作成した。本酵素の各サブユニットに対する抗体を用いて今後更に生化学的諸性質について検討を行う予定である。 3.チオシアン加水分解酵素遺伝子のクロ-ニング T.thioparusの遺伝子ライブラリ-をprokaryotes用発現ベクタ-を用い大腸菌を宿主として作成した。今後は各サブユニットに対する抗体を用いスクリ-ニングを行う。
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