研究課題/領域番号 |
03806021
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岩村 俶 京都大学, 農学部, 教授 (30026570)
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研究分担者 |
篠崎 真輝 京都大学, 農学部, 助手 (80115857)
平井 伸博 京都大学, 農学部, 助手 (00165151)
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キーワード | Triticum aestivum / Benzoxazinones / ファイトアレキシン / 植物免疫 |
研究概要 |
コムギ類およびトウモロコシは病原菌の侵入をうけると特異なファイトアレキシン、benzozazinone(DIBOA)類を生成することが知られている。これらは不活性なグルコシドとして存在し、感染刺激により酵素的に加水分解されて抗菌本体であるDIBOA類を生成する。本研究者らは、これらの抗菌物質がコムギの発芽と同時に出現し、やがて緑化して独立栄養期に入るとともに消失することを見いだした。本研究は萌芽的研究として、この特異な現象を詳細に調ベ、その意味を明らかにすることを目的として行なった。 まず、DIBOAグルコシド類をコムギ芽生えより抽出して調製した。さらにこれらのものをグルコシダーゼ処理してDIBOA類を得た。これらのものをHPLC分析の標準サンプルとして、芽生え時の発現の経時変化を詳細に調ベた。その結果、発芽とともにグルコシド類が多量に現れ、次いで抗菌本体のDOBOA類が十分な抗菌濃度で現われることがわかった。この発現は、殺菌処理あるいはコムギ病原菌胞子による感染処理によっても、またカミソリによる傷害によっても何ら影響されなかった。これよりDIBOA類は感染あるいは傷害により誘導発現するものではなく、予め予定されたものとして発現していることがわかった。 DIBOA類の前駆体は発芽前の吸水種子を抽出しても見いだされず、その発現はde novo合成によるものではないと考えられた。また、乾燥種子を溶媒抽出してもDIBOA類とその前駆体は見いだされなかった。これらのことより、DIBOA類はグルコシド結合を介して、何らかの高分子複合体として種子中に保蔵されているものと考えられた。これらの結果は、DIBOA類が親世代によって用意され、子世代において発芽とともに現れ感染防除に働いているという、耐病性因子の継代発現仮説を支持するものであった。
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