天然四倍体(4n)ドジョウと通常二倍体(2n)の正逆交雑から作出した三倍体(3n)と、交雑後の高温処理より作出した五倍体(5n)の妊性とこれら子孫の発生能力につき検討したところ以下の成果を得た。 1.3n雄は1対の精巣を有したが、接水により活性を示す精子は認められなかった。なお、飼育5n(8尾)中には雄は見られなかった。 2.2n♀×4n♂由来3nは最大4279個の卵を産んだが、4n♀×2n♂由来3nの最大卵数は137個であった。5nの最大産卵数は224であった。 3.3n、5n雌より得た卵子に2nの精子と人工受精(3n×2n、5n×2n)し、その一部は加圧処理による第2極体放出阻止を行なった(3n×2n・PS)。また、紫外線照射精子による雌性発生誘導(3n×UV、5n×UV)および第2極体放出性阻止(3n×UV・PS、5n×UV・PS)を行なったところ、3n×2nにおける正常稚魚出現率は雌により異なり0-75%であった。3n×2n・PSの正常率は1-29%で、3n×UVでは雌により正常雌魚が出現しない場合と21%近く生じる場合があった。3n×UV・PSの正常率は3n×UVと変わらなかった。5n×2nの正常率は35-39%、5n×UVはすべて奇形であった。 4.3n雌は大型卵(平均卵径1.44mm)と小型卵(1.04mm)を産む場合があり、大型卵の出現率は家系により異なった。小型卵は、通常二倍体の卵(1.09mm)とほぼ同じ大きさであった。5nの卵(1.17mm)は3nの大型卵と小型卵の中間であった。 5.3n×2nでは、大型卵を用いた場合の正常率が高く、3n×UVでは、小型卵からは正常な稚魚はほとんど得られなかった。 以上の結果より、天然4nより由来する3n、5nは雌で妊性を有し、その子孫は生存能力をもとことがわかった。
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