本研究は、水産動物におけるD-アミノ酸の分布を調べることを目的としている。平成3年度はD-アラニンの定量法を設定するとともに、軟体動物の二枚貝類と巻貝の遊離D-アラニンを分析し、報告した。引続き本年度は、軟体動物中未測定のイカ・タコ類、節足動物のエビ・カニ類、棘皮動物のウニ・ナマコ類、原索動物のホヤ類、脊椎動物の魚類のD-アラニン含量を調べた。 イカ・タコ類 マダコ(腕筋)、コウイカ、スルメイカ(以上、外套筋)およびホタルイカ(全体)では、コウイカとホタルイカにD-アラニンがそれぞれ2および4mg(組織100g中、以下同様)検出されたにすぎなかった。 エビ・カニ類 エビ類3種、カニ類4種の筋肉について調べたところ、いずれも8-264mgが認められた。これらの動物群では、D-アラニン含量は種により大差がみられたが、D-アラニンが多いとL-アラニンも多く、D-アラニンが少ないとL-アラニンも少ない傾向があり、D-アラニンの、D-アラニンとL-アラニンの合計に対する割合(D/D+L)は26〜41%とほぼ一定となった。筋肉以外では、ボタンエビの卵に5mgのD-アラニンが検出され、D/D+Lは30%となり、ボタンエビの筋肉(26%)と同程度であった。 ウニ類・ナマコ類 バフンウニとムラサキウニの生殖腺にそれぞれ90および170mg認められ、D/D+Lは68および45%と高かった。マナマコの体壁には痕跡認められたにすぎなかった。 ホヤ類・魚類 ホヤ類ではマボヤの筋膜体を、魚類ではトラフグ、アンコウの筋肉と肝臓、ヒガンフグ、コイ、ブリの筋肉を供試したが、いずれの試料にもD-アラニンはほとんど検出されなかった。しかし、魚類では遊離アミノ酸が全体的に少なく、高濃度のエキスを用いるため、他の成分が測定を妨害している可能性もあり、さらに検討を要する。
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