研究概要 |
1.Skeletonema costatumが産生する自己阻害物質の単離・同定: 培養液500lのpHを2〜3とし酢酸エチル(EtOAc)で抽出し,減圧下でEtOAcを除去して6.8gの油状物質を得た。これに0.2nNaOH溶液を加えて溶解しセファデックスGー15カラムに添加し純水で溶出した。活性画分のpHを2〜3としEtOAc抽出し,減圧下で蒸発して2.9gの赤色油状物質を得た。これをEtOAcに溶解し50枚のTLCプレ-トにスポットし,アセトンで展開した。活性を持つ一番上のスポットの薄層を掻き取りアセトンで抽出した。これを減圧濃縮して73mgの黄色油状物質を得た。これをアセトンに溶解した後,本年度に購入した高速液体クロマトグラフィ-システムを繰り返し駆使して自己阻害物質を単離し,235nmの吸光度から3.1mgと算出した。自己阻害物質の ^<13>C NMRと ^1Hー ^1H COSYおよびEIMS分析からこれを15ーヒドロキシエイコサペンタエン酸(15ーHEPE)と同定した。また本阻害物質と15ーHEPE標品の ^1H NMRスペクトルはよく一致した。 2.自己阻害物質の産生過程: S.costatumの増殖過程のうち,指数増殖期(p1),最大増殖期を少し過ぎた時期(p2),約1/3の細胞が枯死した時期(p3)および全細胞が枯死した時期(p4)の培養を静置し上清と細胞に分けた。それぞれをEtOAcで抽出し,S.costatumの増殖阻害試験に供した。p1とp2の上清と細胞のEtOAc抽出物による増殖阻害は原培養液の濃度では全く見られなかったが,4倍濃度ではp2の細胞抽出物によって若干阻害された。p3では細胞抽出物が強く阻害し,その上清抽出物もかなり強く阻害したが,p4では上清抽出物が強く阻害したのに,細胞抽出物の阻害は著しく弱くなった。このことは自己阻害物質が増殖初期より産生されその一部は培養液中に排出されるが,増殖と伴に細胞内の阻害物質濃度が増加し,また細胞内の阻害物質濃度があるレベルを越えると,細胞は枯死し始め,同時に阻害物質が細胞外に放出されることを示す。
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