研究概要 |
1. Skeletonema costatum産生自己増殖阻害物質を酢酸エチルで抽出した。この抽出物をゲルろ過および薄層クロマトグラフィーによって処理し,最後に高速液体クロマトグラフィーによって単離した。 このようにして得た自己増殖阻害物質の^^<13>CNMR,^^1H-^^1HCOSYスペクトルおよびEIMSを解析するとともに15-ヒドロキシ-エイコサペンタエン酸(15-HEPE)と比較し,本阻害物質を15-HEPEと同定した。 2. 自己増殖阻害物質はS.costaumの増殖初期より産生され,その一部は培養液中に排出された。その後,細胞密度が高くなるとともに培養液中の本阻害物質の濃度が幾分高くなり,細胞内のそれはさらに蓄積された。一部の細胞が枯死すると本阻害物質が放出され,培養液中のその濃度が増加し,別の細胞に影響を及ぼし加速的に阻害作用を起こす結果,細胞数が急速に減少した。 3. S.costatum培養液中に吸着剤2種,強塩基性イオン交換樹脂1種およびNa_2Sを添加したところ,いずれも対照区より最大細胞密度を若干高めた。中でも活性炭区では最大密度を2〜3倍高め,その密度を5日間以上持続した。16日後には一部の異常細胞が現われた。また,1日1回最大密度に達する前に培養の1/3を採り,同量の倍地を新たに添加して希釈すると,ほぼ一定の細胞密度を保ち,細胞は正常であった。 4. Chaetoceros costatus,Ditylum brightwelliiおよびAsterionella japonicaのうち,A.japonicaとD.brightwelliiの培養液から自己阻害物質が検出された。前者の自己阻害作用はS.costatumのそれの約半分に相当し,後者のそれはかなり弱かった。両者の自己阻害物質は15-HEPEの高速液体クロマトグラムと比較することによって15-HEPEであると同定された。S.costatumの自己増殖阻害物質の産生量を1とすればA.japonicaとD.brightwelliiのそれはそれぞれ約1と1/7であった。
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