法面崩壊における土壌間隙閉塞の時間依存性に関する研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03806037
• 研究機関: 東京農工大学
• 研究代表者: 安富 六郎 東京農工大学, 農学部, 教授 (10011892)
• 研究分担者: 加藤 誠 東京農工大学, 農学部, 助手 (50015096)
• キーワード: 農地保全 / 農地法面 / 透水性 / 間隙閉塞 / 侵食 / レオロジ-

研究概要

法面内部における侵食・堆積状況を調べるために、島根県那賀郡弥栄村の圃場整備後5年を経た整備水田と未整備水田の畦畔法面における土壌理工学性の分布を調査した。また弥栄村の代表的な花崗岩風化土を水路法面から採土して、飽和土壌透水係数の経時的変動を背圧式飽和透水試験装置(現有装置)を用いて調べた。その供試土における透水前後の土壌間隙径分布などを偏光顕微鏡(現有装置)を用いて観察した。さらに透水係数の低下した実験結果と間隙閉塞モデルを比較し、土壌間隙の閉塞形態を検討した。
未整備水田の畦畔法面における側方方向(法面に平行な方向)の透水性の不均一化は、圃場整備水田に比べて進んでいた。未整備水田の畦畔法面における側方向透水性は、法肩部から法先部に向かうほど著しく低下した。法先部の粘土分含有率は法肩部に比べて高く、側方向透水性の不均一化は浸透水に懸濁した土壌細粒子の移動によって生じたと考察した。
花崗岩風化土の透水性の経時的変動を測定し、飽和透水係数の変動パタ-ンを(1)緩慢な増加、(2)透水初期の低下、(3)平衡の3類型に分類した。(2)の土壌透水性が経時的に低下した実験結果と間隙閉塞モデルを比較した結果、瞬時閉塞の形態で間隙閉塞は進行していた。しかし土壌薄片を作成して浸透にともなう間隙構造の変化を顕微鏡観察した結果、透水後の0.09から0.35mmの間隙は透水前に比べて減少して、0.03から0.09mm径の間隙は増加した。顕微鏡観察の結果からは、逐次閉塞の形態で間隙閉塞が進んだと判断できた。これらの間隙閉塞モデルの適合結果および偏光顕微鏡の観察結果に基づいて、懸濁液が間隙の狭窄部で瞬時閉塞を生じて一定時間後凝集して沈降や付着を生じたものと推定した。このように土壌透水性の変動には土壌細粒子の挙動が関与したと判断した。

研究成果

• [文献書誌] 三原 真智人,安富 六郎: "土壌透水性の経時的変動と間隙閉塞機構" 農業土木学会論文集.
• [文献書誌] Machito MIHARA,Rokuro YASUTOMI: "STRUCTURAL CLOGGING MECHANISM IN POROUS MEDIUM BY SOIL SUSPENSION FLOW" Proceedings of XIth International Congress on Rheology.
• [文献書誌] 三原 真智人,安富 六郎: "中山間地における圃場整備の農地防災効果に関する調査事例" 農業土木学会誌. 59ー4. 21-29 (1991)
• [文献書誌] 三原 真智人,安富 六郎: "中山間地水田における侵食災害と土地利用上の特徴ー島根県那賀郡弥栄村昭和63年豪雨災害の事例ー" 水利科学 (財)水利科学研究所. 35ー5. 1-12 (1991)
• [文献書誌] Rokuro YASUTOMI,Machito MIHARA: "RAINーFALL EROSION HAZARDS OF AGRICULTURAL FIELD IN JAPAN" Transaction of 14th International Congress of Soil Science. VII. 386-387 (1990)
• [文献書誌] 共著 安富 六郎 他: "新農地工学" 文栄堂, 300 (1992)
• [文献書誌] 安富 六郎 他: "明日をひらく農道整備" 農業土木学会, 200 (1991)