研究概要 |
地表からのガスフラックスを微気象学的に精度良く測定する方法を確立するため、理論的に提唱されているEddy Accumulation法の実用化を検討した。 定速Eddy Accumulation法の理論によれば、風の垂直成分(標準偏差σw)によって上下方向に運ばれる空気中のガス濃度をCup,CdnとするとガスフラックスはF=bσw(Cup-Cdn)となる。ただし、bは実験定数である。本研究では、こうした理論的要請に合致するよう、風の鉛直成分の向き別に空気をサンプリングする、高速自動サンプリング装置を試作した。また、数種類の植生下での実験定数bの検討と本測定法の精度検定を踏まえ、試作した装置により水田からのメタンフラックスを測定した。 実験定数bは、20mを越す林の上部ではσw=0.3以上にならないと収束傾向が見られないが、潅木林や水田のような背の低い植生上では、b=0.53の一定値を取ると見做せた。また、この値を用いてEddy Accumulation法により潅木林と水田で顕熱フラックスを求め、Eddy Correlation法、熱収支法による値と比較したところ、充分な精度での測定が可能であることが分かった。 水田におけるメタンフラックスは朝方から徐々に増加し、日没になると減少するという変化を示し、平均30mg/m2/hr程度の妥当と考えられる測定値が得られた。しかし、フラックスがさらに小さいと予想される場所での測定値は、かなりばらつきも大きく、精度を上げるためには、サンプリングしたガス濃度の測定精度をさらに向上させることが課題として残された。
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