本科学研究費補助金の研究課題は、ブロイラ-腸管上皮細胞における微細構造の生後変化について白色レグホン種と比較することであり、更にその発育過程において、最も顕著な差異として発生する糸状バクテリアの生理学的な意義と鶏の発育に及ぼす影響を検討することであった。ブロイラ-は孵化当日から成熟した上皮細胞を有し、いずれの日齢においても白色レグホンより活発な機能を有しており、10日齢付近で最高の機能亢進を示した。次に、鶏の発育初期に発生する糸状バクテリアの生理学的意義について検討した。まず、給与飼料条件により糸状バクテリアの発生に差がみられるか否かを検討するために、ブロイラ-用初期飼料、採卵鶏用大雛飼料、高蛋白質・低カロリ-飼料および低蛋白質・高カロリ-飼料を給与した結果、20日齢ブロイラ-においても最も顕著な糸状バクテリアの出現が認められ、白色レグホンでも増体重の顕著な個体では、小数の糸状バクテリアが認められたが、飼料間における顕著な差異は認められなかった。しかしながら、以前の電子顕微鏡学的観察において示唆された糸状バクテリアと上皮細胞間の物質交換の可能性については、今回の抗体価検索により生理学的に立証された。すなわち、糸状バクテリアだけを腸内細菌分離用DHL寒天培地で細菌培養し、鶏血清との抗原・抗体反応を検索した結果、白い凝集反応が確認され、明らかに糸状バクテリアの細胞質の一部が鶏の腸管上皮細胞に移行していることが実証されたものと確信する。幼雛の発育促進効果があるか否かについては、ブロイラ-専用種にこのバクテリアが多く発生し、白色レグホンでも増体重の多い個体に出現する傾向があり、また、感染による病的疾病が認められないことから、少なくとも鶏の発育阻害を誘起する菌ではないものと思われる。現在、抗体価出現時期の確認や発育促進効果等の栄養生理学的な面への影響について検討中である。
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