研究概要 |
平成3年度〜平成5年度の3年間にわたり、主に発生初期〜中期におけるヒト胎児胸腺の機能化に及ぼす性ホルモン、特にエストロゲンの効果について、以下の要領で検討した。 1.胎生第21週までのヒト胎芽・胎児の胸腺を合法的に入手し、一部は固定液に浸したのち、薄切し、エストロゲン受容体(ER),FTS,ケラチンの免疫染色を行った(清木、坂部)。 2.残りの胸腺は、ホモジエナイズ後、その上清をELISA法によりERとFTSの定量に使用した(坂部)。 その結果、つぎの所見が得られた。 1.発生第16週で胸腺内に早くもERが発現し、その後発生の進行にともない、ER量は増加した。また、ERは、胸腺の皮質・髄質を問わず、胸腺上皮およびハッサル小体に局在し、リンパ球やマクロファージには認められなかった。 2.同じく、FTSは発生第16週頃胸腺に発現し、発生の進行にともないその含有量は増加した。またFTSは、ERと同様に胸腺上皮とハッサル小体に局在し、リンパ球・マクロファージには認められなかった。 以上の結果より、ヒト胎児胸腺では、発生の早い時期(中期)にすでにERが発現しており、エストロゲンはその受容体を介してFTSの産生・放出を調節しながら、「胸腺・性腺」軸の機能化に関与していると考えられる。
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