研究概要 |
平成2年度までにニワトリ胚漿尿液中のウイルス活性化プロテア-ゼ(VAPI)は血液凝固第十因子(FX)であることを突き止めている。平成3年度においては次のことを明かにした。 1、ニワトリ胚のもう一つのウイルス増殖場である羊水中のVAPIも蛋白精製により活性型FX(FXa)であることが判明した(FEBS Lett.in press)。 2、漿尿膜、肝より作製したcDNAライブラリ-よりVAPI(FX)遺伝子のクロ-ニング、塩基配列を決定し、VAPIとFXが同一であることをさらに明確に証明した(FEBS Lett.283.281ー285,1991)。 3、漿尿液より精製したVAPIを抗原として、兎より抗VAPI抗血清を得た。この抗血清と上記のVAPI特異cDNAを利用し、Western blotting、蛍光抗体法、Northern blottingにより、FXとそのmRNAの組織分布を明かにした。ニワトリ胚での発現組織は肝、漿尿膜、羊膜、腎、脾、腸管であり、hutching後も基本的にはその分布は変わらなかった。なお、活性型のFX(FXa)が存在する部位は漿尿液、羊水のみであり、ウイルスのトロピズムによく一致した(EMBO J.in press)。 4、shellless embryonated eggの系を使って、soybean trypsin inhibitor、FXの特異的抑制物質であるダンシルGluーGlyーArgCH_2Clを羊水中に投与したが、ニワトリ胚への明確な影響は残念ながら観察できなかった。 ニワトリでの第十因子の異所性発現が鶏胚においても又hutching後も基本的に変化しないことがわかったが、その生理的意義までは解明できなかった。この解明には、第十因子欠損マウス(ニワトリ)の作製などの新しい実験が必要とされる。
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