研究概要 |
腎臓で利尿ナトリウムの排泄を促進する心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の受容体にはA、B、Cの3種類のサブタイプがあることが分子生物学的方法で明らかにされた。そこでそれらの受容体サブタイプmRNAと蛋白の腎臓内局性と細胞分布を検索した。 A、B受容体のcDNAはD.L.Garbers博士(Howard Hughes Medical Institute,Nashville),C受容体cDNAは広瀬茂久博士(東京工業大学)より供与された。これらのcDNAをPGEM3Zにサブクロ-ニングしRNAポリメラ-ゼをつかいRNAプロ-ブを作成した。それを用いて腎臓の糸球体、皮質、髄質外層、髄質内層より抽出したRNAとRNase Protection Assayを行なった。その結果、ANPの受容体のRNAは糸球体に非常に多く発現しており、サブタイプではC>A>Bであった。糸球体以外にはCタイプ受容体のmRNAが髄質外層、髄質内層に糸球体の約 1/100量認められた。 受容体サブタイプに対する抗体はまだCタイプしか作られていない。その抗体を用いた免疫組織化学でもC受容体蛋白は糸球体にほぼ限局して存在し、わずかに髄質外層の直血管や髄質内層の集合管に認められた。糸球体を可溶化し抗C受容体抗体を用いたWestern blotを行ない糸球体のC受容体蛋白は分子量は64Kdであるが非環元下でも同じサイズであったことから肺などで報告されている64kdの二量体ではなく単体で存在していると考えられた。 これらの結果からANPは糸球体に作用し、糸球体において限外瀘過を促進することで利尿とナトリウム排泄を増加させると推定された。
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