Tリンパ球細胞株(SUP-T13)を免疫原としてこの細胞に増殖抑制をおこす単クローン抗体を作成した。クローン1B9(IgG1)、4F9(IgM)はそれぞれ90kDa、180kDaの細胞表面抗原を認識し、可逆的な増殖抑制をおこした。クローン2DI(IgM)は、SUP-T13、Jurkat、CCRF-CEM、Molt-4、Molt-3のT細胞株にApoptosisを起こすことが判明した。これらのうち、SUP-T13は最も感受性が高く、1ng/mlの2D1で増殖抑制が認められ、2-3時間以内に核の断片化やoligonuclesomeのladder patternが観察された。U937、K562、Reh(B cell)、DaudiではApoptosisは認めなかった。この表面抗原分子の同定は、困難であったが、アポトーシス刺激を伝える細胞表面抗原であるFas遺伝子を発現させたマウス細胞株と反応し、ヒトFas分子を認識していることが強く示唆された。 SUP-T13から、2D1耐性株(LAC2D1R)を分離樹立した。この細胞上には、SUP-T13と同等の2D1抗体反応性が認められ、apoptosisに至るシグナルの欠損が示唆された。しかし、LAC2D1Rは、カルシウムイオノフォアA23187、放射線刺激などのapoptosisを起こしえる刺激に対しては、感受性はかわらず、比較的初期のシグナルの欠損であることが示唆された。これらの細胞において、Hsp70、bcl-2、p34cdc2、Retinoblastoma gene productなどの発現は同等であった。 現在は、2D1によって認識される抗原とその刺激伝達機構について解析を進めている。
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