(1)Thyl MRL/lprコンジェニックマウスの育成は現在第27世代目に入っている。一時期の発症遅延は、数世代に亙る選抜で回復しつつある。 (2)lprマウス全身性リンパ節腫大が悪性か否かの決定(MRL/lpr.Thyl.1×MRL/lpr.Thy1.2)F1に致死量の放射線を照射し、両親系の骨髄を混合して移入した。数カ月後に、このF1マウスの腫大リンパ節の構成細胞のThy1表現型を観察することにより、増生リンパ球のクロ-ナリティを決定する予定である。骨髄移植により、発症が遅延するため、まだ明確な結論を得ていない。 (3)lpr表現型(リンパ節腫大)の+/+マウスへの移入モデルの作製5Gyの全身照射した+/+マウスにlprマウスの骨髄細胞と、同時にlprマウスのリンパ節を腎被膜下に移植すると、数カ月後に移植リンパ節は著明に腫大する。これが移入モデルのプロトタイプである(投稿中)。5Gy程度の全身照射は必須であった。lpr由来の骨髄細胞は必ずしも必要ではない。lprのリンパ節は必須である。リンパ節の代りに、胸腺や脾を移植すると、胸腺はリンパ節様に、脾は脾として腫大した。移植リンパ節の構成細胞中、リンパ球ではなく線維芽細胞様の大型間葉系の細胞が重要であることが判明した(投稿中)。従って、現在、「lprマウスではlpr mutationによりこのリンパ節間葉系細胞の機能欠損を来し、その結果、リンパ節構造の構築と維持(homeostasis)が出来ない」という作業仮説を立てるに至っている。以上の知見から、以下の指針が導き出された。<1>lpr遺伝子産物に対する抗体を得るためには、正常リンパ節の間葉系細胞を抗原とすべきである。<2>lpr遺伝子のcDNAの出発材料は、正常リンパ節の間葉系細胞である。この様に、臓器・細胞の操作を基礎とするこの新しい方法論は、現時点では、極めて生産的かつ有効であると考えられる。
|