研究概要 |
1)ライム病ボレリアの鞭毛蛋白遺伝子、主要表層蛋白A(Osp A)遺伝子増幅プライマー対F1,F2,とA1,A2を夫々合成してpolymerase chain reaction(PCR)をボレリア培養液、実験感染マダニとマウスについて実施した。培養液のF1,F2によるPCRでは日、米、欧の全てのライム病ボレリア、並びに回帰熱ボレリアで目的の419bp DNA断片の増幅が見られたが、鞭毛遺伝子の相同性が比較的高いレプトスピラ、レプトネマでは見られず、F1,F2がボレリア属鞭毛遺伝子の一部を特異的に増幅することを明らかにした。F1,F2による2段階のPCRでは10^2個のボレリアでも検出可能で、十分実用に供し得る感度であった。また、ライム病ボレリア実験感染マダニから目的鞭毛遺伝子断片の増幅検出ができ、野外マダニ試料への応用が可能になった。ライム病ボレリア実験感染ddYマウスでは耳介試料で419bpの特異バンドが検出できることが明らかになり、簡便な方法として主なボレリア保有体の疫学調査に応用可能である。Osp A遺伝子を標的とするPCRではB.burgdorferi、B.garinii、一部のシュルツェマダニ由来株で646bpの目的遺伝子断片が増幅され、VS461群、ヤマトマダニ由来株では増幅されないことから分類に応用できる可能性を示した。 2)日本分離株、欧米分離株からDNAを抽出、HindIII,EcoRI,EcoRV,StyI処理、16S、23S rRNA遺伝子のPCR増幅DNA断片をプローブとするサザーン・ハイブリダイゼーションを行って制限酵素断片長多型性(RFLP)解析し、日本のシュルツェマダニ由来株はB.burgdorferiに帰属せず、B.garinii,VS461群、その他に分類されること、また、ヤマトマダニ由来株は新種のボレリアである可能性を示した。 3)非近交系マウスへの北米由来病原性B.burgdorferi297株の実験感染に成功し、特に心臓、膀胱から長期にわたりボレリアが分離できることを示し、本実験系を用いたワクチン開発実験が進行中である。
|