研究代表者らはBalb/cメスのマウスの口唇にherpes simplex virus-1型(HSV-1)F株を接種し高力価抗HSV血清抗体を用いて受動免疫を施こして三叉神経節(Trigeminal Ganglia-T.G.)内限局性HSV潜伏感染モデルを用いて各種薬剤をHSV接種と同部位の口唇皮下に注入することによって経軸索的に潜伏感染ニューロンを破壊して潜伏感染を除去することを検証した。前年度にAdriamycin 10mg/mlを生理的食塩水の溶解して注入した場合潜伏感染除去は認められなかったがあらかじめ高張食塩水を注入することによりskin-Langerhans細胞を減少させてから高張食塩水に懸濁して注入すると33-57%除去されることを報告した。本年度は可能な限りウイルス接種部位に焦点を合わせ同様の実験をくり返したとこと100%まで除去可能となり良好な成績が得られた。次にDNAse、RNAse、ATPaseについても検証したがこれらのagentsでは潜伏感染除去は認められなかった。さらにskin-Langerhans細胞を減少させる他の手技としてステロイドの前注入法も施行した。すなわちあらかじめ500-1000μgを注入後Adrianycinを注入したが56%マウスが死滅し目的は達成されなかった。以上、上記の検索はT.G.をVero細胞との共生培養によるCytopathetic Effect(CPE)の出現の有無によって除去効果を判定したが、本年度はこれに加えpolymerase chain reaction(PCR)によるHSVDNAの消長を検討したが対照すなわちAdviamicynを注入しないマウスのT.Gホモジネート上清にすらHSVDNAが検出されず本検索に不適当であった。これはTG内限局性潜伏感染に由来すると考えられた。尚Adriamycinによる本研究成果による臨床応用については本剤による皮膚の催炎と後続する皮膚の欠落があり、従って身体の非露出部(陰部ヘルペスなど)の頻回のヘルペス皮疹の出現する症例に応用可能と考えられた。
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