研究概要 |
βT細胞抗原受容体(βTCR)遺伝子を導入したβTCTトランスジュニックマウスとSV40T抗原遺伝子を導入したSV40Tトランスジェニックマウスとをかけ合せ,発生した胸腺細胞腫より,いくつかの胸腺細胞株を確立した。そのうちの2つの胸腺細胞株は細胞表面にトランスジェニックのβTCRを発現していたが,CD3複合体はCD3を抗体をFACSを用いた解析では検出されなかった。この2つの細胞株のうちのひとつ,LSB11ー1細胞上のβTCR複合体についてさらに生化学的な解析を行った。LSB11ー1細胞の細胞表面蛋白質を^<125>Iで標識し,ジギトニンを用いて細胞を溶解し,免疫沈降を行った。βTCRに対する抗体で,βTCRの一量体および二量体に相当する分子が検出されたが,CD3複合体は検出されなかった。αTCR,CD3ε,CD3эに対する抗体では,βTCR複合体は沈降されなかった。また,δTCRに対する抗体で細胞表面を染色したが,δTCRは検出されなかった。以上より,LSB11ー1細胞の細胞表面上に発現しているβTCRはαTCR,δTCRおよびCD3複合体を伴わずに発現していることが示唆された。このLSB11ー1細胞に発現可能なαTCR遺伝子を導入したところ,αTCRが細胞表面に発現した細胞はCD3複合体の発現を伴っていた。このことは,LSB11ー1細胞がαTCR遺伝子が再構成する前の未熟胸腺細胞に相当する可能性を示している。次にLSB11ー1細胞を ^<35>Sーメチオニンで標識し,ジギトニンを用いて細胞を溶解し,免疫沈降を行った。βTCRに対する抗体でβTCRのほかにいくつかの蛋白質を検出した。現在,これらの蛋白質が,βTCRに付随して発現している蛋白質がどうを確認しようとしている。今後,このCD3複合体を伴わずに発現しているβTCR複合体の発現様式および機能を明らかにしていく予定である。
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