研究概要 |
1)K562細胞を10% fetal calf serum加RPMI1640培養液で継代培養して増殖させた。これで実験に必要な大量の細胞を安定して供給できるようになった。2)ウサギにK562細胞浮遊液を数回静注して抗K562細胞血清を作成した.3)K562細胞をタ-ゲットとして,ウサギ抗K562細胞血清と補体(市販のモルモット血清)による細胞障害性試験の条件を設定した.4)高速液体のクロマトグラフィ-によるポリアミン(プトレッシン,カダベリン,スペルミジン,スペルミン)の測定方法を確定した。ここではプトレッシンの保持時間が変動するとか,プトレッシンとカダベリンの分離の不十分,あるいは送液ポンプによる気泡の発生が原因と思われるグラフの基線の乱れ等の難点に出会ったが,移動相の改良,グラシェントプログラムの変更等の工夫により解決をみた。 以上の準備を経て,実験の結果次のような知見が得られた.ポリアミン合成阻害剤であるメチルグリオキサ-ルビスグアニルヒドラジン(以下MGBGと略す)を添加してK562細胞を3日間5%CO_2インキュベ-タ-で培養した場合,トリパンブル-法でみた限りにおいて細胞の死滅は生じないが,1)細胞の増殖が抑制され,2)ウサギ抗K562細胞とモルモット補体による細胞障害に対する感受性が著しく増強される。次に,MGBGとスペルミジンを同時に添加して培養すると細胞増殖は抑制されずまた補体による細胞障害の増強もみられない。これらのことから細胞の増殖と補体による細胞障害性に対する細胞側の防禦機構にポリアミン特にスペルミジンが関与していることが示唆される。
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