研究課題/領域番号 |
03807035
|
研究機関 | 島根医科大学 |
研究代表者 |
塩野 寛 島根医科大学, 医学部, 教授 (20112451)
|
研究分担者 |
赤根 敦 島根医科大学, 医学部, 助手 (70202520)
高橋 節典 島根医科大学, 医学部, 助手 (90032226)
松原 和夫 島根医科大学, 医学部, 助教授 (20127533)
|
キーワード | DNA分析 / 性別判定 / ポリメレ-ス・チェイン・リアクション(PCR)法 / 性染色体 / DYZ1 / アメロゲニン遺伝子 / 縦列型反復配列遺伝子 / 単一コピ-遺伝子 |
研究概要 |
Y染色体長腕のDYZ1縦列型反復配列と、XーY相同遺伝子のアメロゲニン遺伝子をPCR法で増幅する法医学試料の性別判定法を検討したところ、前者は数千コピ-の反復配列であるため、わずか0.24ngの試料からも増幅が可能であった。一方後者はX及びY遺伝子を別々の断片として同時に検出でき、Y染色体のみを検出する前者に比べX遺伝子が増幅の成否の指標となるためより確実な診断法である。しかしアメロゲニン遺伝子は単一コピ-遺伝子であるため検出感度は低く、最低250ngの試料が必要であった。また腐乱死体から得た変性試料では、DYZ1の検出は可能であったがアメロゲニン遺伝子は増幅できなかった。これらの結果は微量 かつ汚染・変性の可能性が常に考えられる法医学試料では単一コピ-遺伝子のPCR増幅が困難である場合が予想され、コピ-数の多い反復配列やミトコンドリアDNAを分析対象とする方が適用範囲が広くなることを示唆した。しかし一方で、いろいろな遺伝情報を有する単一コピ-遺伝子の増幅が要求される場合も多いため、2段階増幅法(デュアルPCR法)の応用を検討したところ、0.005ng(ヒトゲノムDNAのほぼ1分子に相当)のアメロゲニン遺伝子からの分析が可能となり、感度は飛躍的に向上した。しかしこの方法でも腐乱試料からの検出は(おそらく阻害物質による汚染のため)困難であった。 以上今年度の成果から、PCR法の法医学的応用に関しては、 1.コピ-数の多い反復配列が検出が容易であるため、なるべくそのような遺伝子を分析対象として選択すること 2.汚染・変性したDNA試料の精製方法を確立すること の2点が今後の課題になるものと考察した。
|