平成3年度の研究より、サプレッサーT細胞の機能発現にあたっては、サプレッサーT細胞上のLFA+1分子と活性化B細胞上のICAM-1分子との間の直接接触が必要であることが明らかとなった。最終年度である平成4年度の研究においては、ヒトサプレッサーT細胞の作用機序についてさらに以下の点が明らかとなった。 (1)サプレッサーT細胞より抑制シグナルを受けたB細胞ではDNAポリメラーゼαの発現が低下し、サプレッサーT細胞との接触をなくすことによりこのDNAポリメラーゼαの発現は回復する。 (2)サプレッサーT細胞という独立した集団が存在するのではなく、活性化されたT細胞は活性化B細胞に対して一様に抑制効果を発揮する。休止期B細胞は逆にこの“サプレッサーT細胞"によって活性化される。従って、活性化T細胞のヘルパー機能・サプレッサー機能を決定するのは、むしろB細胞の活性化の状態であると考えられる。 2年間に亘る本研究の結果、ヒトサプレッサーT細胞の作用のメカニズムが細部に亘って明らかとなった。本研究の成果は、全身性エリテマトーデスなどの多クローン性B細胞の活性化を伴った自己免疫疾患の病態を解析してゆく上で、貴重な基礎的情報を提供するものである。特にB細胞の抑制という現象が酵素レベルで裏付けられたことの意義は大きく、その点で本研究は重要な貢献をなすものであると考えられる。
|