研究概要 |
平成4年度には、YMB-S細胞の分化における細胞周期分布を検討した。その結果、YMB-S細胞にSodium butyrata(NaB)、KL-6抗体などで分化を誘導した際、YMB-S細胞はG1/G0期に集積することが明らとなった。 また、今年度の重要な発見として、免疫賦活薬として急性白血病の治療に使用されているアミノペプチダーゼ阻害薬のウベニメクスがYMB-S細胞に対して分化誘導作用を示すことが判明した。このウベニメクスの投与によりYMB-S細胞は増殖停止と細胞接着能の獲得を示したのである。この際、インテグリン分子の発現レベルを検討したところ、NaBによる分化現象でみとめられたのと同じく、a3、β1蛋白の発現が増強していた。このインテグリン分子の発現増強は、分化による細胞間相互作用の増強あるいは環境認識能の増強を意味するものと考えられるが、本年度にはこの分子の発現分布を確認するため、免疫細胞切片の超微形態学的検討を行い、インテグリンが接着面に増強していることを証明した。近年、ウベニメクスは免疫賦活作用のみでなく、慢性骨髄性白血病細胞に対する直接的抗腫瘍作用を有することが注目されてきている。したがって、今年度の私達の研究によって、ウベニメクスが固形癌に対しても直接作用を示すことが確認された事となる。固形癌治療の新たな手段の開発として、重要な現象として位置づけることができると考えている。 また、来年度予定している、分化における細胞内シグナル伝達機構の変化を解明するため、myc,ras,src,erbB2などの癌遺伝子、癌抑制遺伝子のRB,DCC 遺伝子のcDNAの供与を依頼した。
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