研究概要 |
近年の研究により発癌遺伝子の中でもRas遺伝子が最も高頻度にヒトの癌に関っていることが明らかにされた。すなわち,全長3000から35000個の塩基よりなるRas遺伝子,そのなかの僅か一つの塩基が変異すること(One Point Mukation)がいわゆる“癌遺伝子の活性化"と呼ばれる現象の基本的な変化であり,癌発生に重要な役割を演じていることが示された。この遺伝子の微細な変化を提えることが出来ればそれは癌細胞の診断に利用できると考え,本研究ではPCR(Polymerase Chain Reaction)法という手法により,癌細胞中に存在するRas遺伝子の点突然変異という遺伝子の変化を検索し,肝・胆・膵癌のDNA診断の臨床的応用を目的とした。1.遺伝子突然変異検索の為のPCR法の確立:N-Ras,H-Ras及びK-Rasの2ドン12,13或は61番目についてのOne Point Mirtationの検索をする為に,検体からDNAを抽出し,二つのPrimer(合成DNAで20前後の塩基よりない,目標とする遺伝子にDNAの相補性により特異的に結合する)を用い,PCR法にて予想される発癌遺伝子の変異の部位を検索する方法を確立した。又,PCR法を行なう反応系および必要機器を作製した。2,肝細胞癌,肝内胆管癌,胆のう癌,総胆管癌および膵癌における,N-Ras,H-Ras,K-Rasの2ドン12,13,61の点突然変異の頻度をPCR法と直接塩基決造法により検索した。又この癌症例は検体として手術標本,生模及び超音波下狙撃生検での検体採取されたものも含まれ,微量の検体であっても検索し得た。肝細胞癌では変異の頻度は非常に少く,膵癌では,ほとんどの例で変異が認められた。
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