研究概要 |
体性感覚誘発電位(SEP)は従来より電気刺激により記録されているが、より自然に近い刺激、各種感覚別の刺激方法の開発が進められている。特に、電気刺激では検索因難な温痛覚に関与する小徑線維-脊髄視床路を上行するSEPの記録方法の開発が急務である。我々はCO_2 laser光線を利用して痛覚SEPを記録している。平成5年度は主として痛覚認知機構におよぼす各種干渉刺激(運動、振動覚など)の作用機序について検索した。laser刺激と同部位に与えられた振動覚、運動など大徑線維を上行する干渉刺激では、痛覚SEPは著明に振幅減少し除痛がおこる。これはGate control theoty(Melzack&Wall)に一致した所見であった。またlaser刺激部位以外の手足の自発および他動運動でも、痛覚SEPの有意な振幅減少がおこる。振動覚ではこのようなことはおこらないため、大脳半球における運動に関連する特殊な反応が痛覚SEPに影響をおよぼしているものと考えられる。 痛覚SEPの臨床応用も継続して行ってきた。末梢神経障害患者では、痛覚障害の程度および小徑線維密度の低下と痛覚SEPの所見が高い相関関係を示した。脊髄症患者では、やはり痛覚障害の程度と痛覚SEPの所見が高い相関関係を示し、さらに潜在性異常の検出も可能であった。 私は1993年3月より、佐賀医科大学内科より岡崎国立共同研究機構生理学研究所 統合生理研究施設に転任した。現在は未だセットアップの段階であるが、これまでの脳波による分析に加え、当研究施設に設置されている脳磁気測定装置(MEG,SQUID)を用いて、さらに研究を進めて行きたいと考えている。
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