ミエリン塩基性タンパク(MBP)は強い脳炎惹起性を有するが、その抗原特異部位は、動物の種、系統で異なっている。本研究では日本人のMBPの抗原特異部位について短期T細胞クローニング法で検索し、これまで主に欧米人で報告されたMBPの抗原特異部位と比較検討した。健常者8例では培養を行なったT細胞株中MBPに反応するT細胞株(MBP株)の出現頻度の平均は4.8±3.2%であった。一方、多発性硬化症(MS)8例のMBP株の出現頻度の平均は8.2±3.6%であり有意差は認められないが、健常者に比べ増加していた。また、MBP株の抗原特異部位について検討すると健常者ではMBP84‐102、143‐168に対しそれぞれ得られた全MBP株44株中の15株(30.1%)、10株(22.7%)とこの二つで過半数を超えて反応を示した。MSでは、健常者と同様にMBP84‐102、143‐168に対し全MBP株61株中、22株(36.1%)、および8株(13.1%)が反応を示し、また、MBP61‐82に対するMBP株、12株(19.7%)が得られ、これらの部位に対しより多くの反応性が認められた。MS群で健常者群に比べMBP84‐102に対するT細胞の頻度は高かったが有意差を認めなかった。しかし、両群でMBP84‐102に対し強い反応をみとめ、主要な抗原認識部位と考えられたことは、欧米人で報告されたMBPのT細胞抗原特異部位に対する効果と同様であり、MBPのT細胞抗原特異部位は人種を越えて共通である可能性が考えられた。また、抗原特異部位とMHCの相関についてはMS群では明らかな相関を認めた組み合わせはなかったが、健常対象群でMBP84‐102とDRw14で相関を認め、MBP84‐102はこれまで欧米人で報告のあったDR2に加え複数のMHCと優先的な組み合わせがあることが示唆された。
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